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地震・豪雨・台風といった災害のニュースを見るたびに、「自分や家族の身を守る知識を、きちんと体系立てて学んでおきたい」と感じる人が増えています。そうした防災意識の高まりを背景に注目されているのが「防災士」という資格です。ただし防災士は、弁護士や宅建士のような国家資格ではなく、研修機関も宅建士講座のように多数の予備校が競い合っているわけではありません。この記事では、防災士になるまでの流れと、実際に研修を受けられる窓口(全国対応の民間研修機関・大学や自治体の養成講座・企業研修)を整理したうえで、費用や特徴を比較していきます。独学でどこまで準備できるかや、よくある疑問にもあわせて答えていきます。
防災士とは?国家資格ではない民間資格で何ができるようになるのか
防災士は、認定NPO法人日本防災士機構が認証する民間資格です。公的な免許や独占業務を伴う国家資格ではなく、「防災に関する一定の知識・技能を修得した人」であることを、全国共通の基準で証明する仕組みだと考えるとわかりやすいでしょう。自主防災組織のリーダーや、職場のBCP(事業継続計画)担当、地域の避難訓練の企画役など、肩書きではなく実際の行動で防災力を発揮する人材を育てることが制度の目的とされています。
資格そのものに業務独占はないため、取得したからといって自動的に仕事や収入に直結するわけではありません。それでも、自治体や企業が防災担当者の育成に防災士資格を活用するケースは増えており、履歴書に書ける公的な「学びの証明」として評価されることも少なくありません。資格取得を通じて体系的な知識を身につけたい人は、他分野の民間資格講座と同じように、まず自分の目的(地域活動のためか、仕事に活かすためか)を明確にしてから講座を選ぶとよいでしょう。資格全般の取り方や選び方を広く知りたい場合は、以下の記事も参考になります。

防災士になるまでの4ステップ
防災士になるための流れは、研修機関によって細部は異なるものの、基本的には全国共通で次の4ステップを踏みます。
- 防災士養成研修講座を受講する(『防災士教本』をもとにした事前学習と、合計12講目以上の集合研修(多くは2日間)で構成される)
- 防災士資格取得試験に合格する(3択式30問・正答率80%以上が目安。研修の最終日にあわせて実施されることが多い)
- 救急救命講習を修了する(消防署や日本赤十字社などが実施する講習。研修の前後どちらのタイミングで受けてもよく、消防署主催なら無料で受講できる)
- 日本防災士機構に認証登録を申請する(登録申請料5,000円。申請から防災士証が届くまで数週間〜1ヶ月程度かかることがある)
ポイントは、研修・試験・救急救命講習・登録申請という4つの要件をすべて満たして初めて「防災士」と名乗れるという点です。研修を受けただけ、試験に合格しただけでは資格は完成しません。次の章では、ステップ①の研修をどこで受けられるのかを整理します。
防災士研修を受けられる3つの窓口
防災士の養成研修は、宅建士や簿記のように「予備校各社が独自のカリキュラムを競う」資格ではなく、日本防災士機構が定めた共通カリキュラム(防災士教本にもとづく12講目以上)を、認証された実施機関がそれぞれの形式で提供する仕組みになっています。実施機関は大きく3タイプに分かれます。
- 全国対応の民間研修機関(都市や日程を選びやすく、好きなタイミングで申し込める。費用はやや高め)
- 大学・自治体の公開講座(費用を大きく抑えられることが多いが、居住地の条件や定員、開催時期が限られる)
- 企業向けの集合研修(社員の防災担当者育成を目的に、法人単位で実施されることが多いが、個人でも申し込める窓口を持つ機関もある)
どの窓口で学んでも取得できる資格そのものは同じですが、「いつでも・どこでも申し込みやすいか」「費用を抑えられるか」のバランスが異なります。まずは全国対応の民間研修機関から見ていきましょう。
【比較表】防災士の資格取得講座・研修機関を比較
主な研修の窓口を、研修形式・総額目安・期間・特徴の4項目で一覧にまとめました。気になる窓口があれば、下の個別紹介で詳しい内容を確認してみてください。
| 研修形式 | 総額目安 | 期間 | 特徴 | |
| 防災士研修センター | 集合研修(2日間) | 63,800円 | 2日間(事前学習含む) | 全国80都市以上・年間80回以上開催、年間1万人超が受講 |
| NTT ExCパートナー 防災士育成研修 | 事前学習+集合研修(2日間) | 63,800円(個人申込) | 事前学習1ヶ月+集合2日間 | 東京・大阪・宮城で開催、法人研修のノウハウを個人にも提供 |
| 大学・自治体の 養成講座(参考) | 集合研修(1〜2日間) | 無料〜20,000円程度 | 開催団体により異なる | 費用を抑えやすいが居住地・定員・開催時期の条件あり |
| TAC 「防災の知識を学ぶ」 | Web通信講座(資格取得講座ではない) | 31,000円(10月開講はキャンペーン10,000円) | 全4回(1回60〜80分) | 防災士資格ではなく防災の基礎知識の習得が目的 |
防災士資格を取得できる研修機関を詳しく紹介
1. 株式会社防災士研修センター

「とにかく自分の都合に合う日程・場所で受けたい」という人には、防災士研修センターが第一候補になります。防災士制度が発足した2003年度から一貫して研修事業を手がけてきた老舗で、札幌から福岡まで全国80都市以上で、年間80回以上の研修を開催しています。自治体や企業の団体利用はもちろん、個人でもそのまま申し込める点が特徴で、年間1万人を超える受講者が防災士を目指してこのセンターの研修を利用しています。事前学習用の防災士教本を読んだうえで2日間の集合研修に参加し、最終日に資格取得試験を受ける流れです。
| 研修形式 | 集合研修(2日間、事前学習併用) |
| 総額目安 | 63,800円(研修受講料50,728円+受験料3,000円+登録料5,000円+税) |
| 開催地 | 全国の主要都市(札幌・仙台・東京・横浜・名古屋・大阪・広島・福岡など80都市以上) |
| 特徴 | 防災士制度発足以来の実績、年間1万人以上が受講する国内最大級の実施機関 |
2. NTT ExCパートナー「防災士育成研修」

法人研修で培ったノウハウを、個人の受講者にも開放しているのがNTT ExCパートナーの防災士育成研修です。年齢や職業を問わず誰でも申し込める点はセンターと共通していますが、こちらは事前学習期間を約1ヶ月とって知識を固めたうえで、2日間の集合研修と資格試験に臨む設計になっています。開催地は東京(田町グランパーク)・大阪(PRISM)・宮城(東松島市の防災体験型宿泊施設KIBOTCHA)などで、法人の人材育成を数多く手がけてきた企業らしく、講義の構成や運営のきめ細かさに定評があります。団体申込には割引もあるため、職場の同僚と一緒に受講したい場合にも向いています。
| 研修形式 | 事前学習(1ヶ月)+集合研修(2日間)+資格試験 |
| 総額目安 | 63,800円(個人申込、税込) |
| 開催地 | 東京・大阪・宮城など(年度により変動) |
| 特徴 | 年齢・職業不問、法人向け研修のノウハウを個人受講者にも提供、団体割引あり |
費用を抑えたいなら大学・自治体の養成講座も検討を
民間研修機関は申し込みやすい反面、総額6万円台とまとまった費用がかかります。費用を抑えたい場合は、大学や都道府県・市区町村が実施する防災士養成講座も選択肢になります。たとえば松本大学の公開講座は教本代・試験料・登録料込みで40,000円程度、大阪公立大学の公開講座は受講料14,000円(教本代などは別途)と、民間研修機関より安く設定されているケースが目立ちます。自治体によっては受講料そのものを全額補助していたり、居住者であれば無料で受けられたりする制度を設けているところもあります。
ただし、大学・自治体の講座は「その地域に住んでいる、または通勤・通学している人」が対象だったり、開催が年1〜2回・定員も数十〜数百名に限られていたりと、希望すればいつでも申し込める民間研修機関とは条件が異なります。日本防災士機構の公式サイトには、全国の大学・自治体・民間法人による実施機関の一覧が掲載されているので、お住まいの地域で近く開催予定がないか、まずは確認してみるとよいでしょう。
- 日本防災士機構「防災士養成研修実施機関一覧」: https://bousaisi.jp/license/municipality/training/
資格取得ではなく、まず防災の知識だけ学びたい人向けの講座
「資格取得まではハードルが高いけれど、まずは災害への備えの基礎知識だけでも学んでおきたい」という人には、資格の学校TACが提供する実用講座「防災の知識を学ぶ」も選択肢になります。これは日本防災士機構が認証する防災士養成研修ではなく、防災士資格を持つ講師が、首都直下地震や南海トラフ地震の発生確率、自宅でできる備えや災害時の情報収集方法などをWeb通信講座形式でわかりやすく解説する、知識習得目的の講座です。全4回・1回60〜80分とコンパクトにまとまっているため、資格取得講座への入り口として、あるいは家庭の防災対策を見直すきっかけとして気軽に利用できます。

| 講座形式 | Web通信講座(全4回、1回60〜80分) |
| 費用 | 31,000円(税込、2026年10月開講はキャンペーン価格10,000円) |
| 対象 | 災害リスクの基礎知識や自宅での備えを学びたい人 |
| 注意点 | 防災士資格そのものを取得できる講座ではない |
講座選びで失敗しないための3つのポイント
防災士の研修機関を選ぶときは、以下の3点を確認しておくと、「思っていたのと違う」を防ぎやすくなります。
- 申し込みたい時期・場所に開催があるか(全国対応の民間研修機関は日程の選択肢が多いが、大学・自治体の講座は年1〜2回・居住地限定のことが多い)
- 総額にどこまで含まれているか(教本代・受験料・登録料まで込みの総額か、別途発生する費用がないかを事前に確認する)
- 救急救命講習をどう組み合わせるか(消防署の講習は無料だが日程が限られるため、研修機関が案内してくれるタイミングで一緒に済ませられるかもチェックしておく)
特に2番目の「総額」は見落としやすいポイントです。研修受講料だけを見て安いと思っても、試験料・登録料が別料金になっている場合があるため、申し込み前に必ず内訳を確認しましょう。
資格取得後の学び直し・地域活動への活かし方
防災士資格を取得した後も、知識をアップデートし続ける仕組みが用意されています。たとえば防災士研修センターでは、同センターで資格を取得した人向けに、災害リスクごとの専門知識を深められるオンライン講座「防災士専門講座」を提供しています。必修講座と選択講座をあわせて受講でき、スマホやタブレットでも視聴できるため、資格取得後のスキルアップにも活用しやすい内容です。
また、資格を活かす方向性は人によってさまざまです。職場の防災担当として知識を役立てる人もいれば、自主防災組織や地域の避難訓練の企画・運営に関わる人、学んだ知識をもとに防災講座の講師として副業的に活動する人もいます。知識を人に教える形で収入にもつなげたい場合は、副業スクールの比較記事も参考になります。

防災士として地域活動に参加することを考えている人は、防災以外の分野でも地域とのつながりを広げられる大人の習い事を併せて検討してみるのもおすすめです。

独学でも防災士は目指せる?
結論から言えば、防災の基礎知識を独学で身につけることは十分可能ですが、「防災士」という資格そのものを独学だけで取得することはできません。理由は、日本防災士機構が定める認証研修(集合研修または同等のオンライン研修)の受講と、研修の最終日などに実施される資格取得試験への合格が、認証登録の必須要件になっているためです。市販の防災関連の書籍をいくら読み込んでも、研修を受けずに試験だけを受験することはできない仕組みになっています。
とはいえ、研修を受ける前に独学で基礎を固めておくと、限られた研修時間を無駄にせず、当日の理解もスムーズになります。効率よく準備するなら、以下のようなステップがおすすめです。
- 防災士教本の内容に近い入門書を読んでおく(地震・水害・火山災害など、幅広い災害リスクの全体像を先に押さえておく)
- 自宅の防災対策・非常持ち出し品を見直す(座学だけでなく、実際に自宅の備えを点検しておくと研修内容と結びつけやすい)
- 受けたい研修機関の過去の試験傾向や教材サンプルを確認する(各機関の公式サイトや資料請求で、出題範囲とのギャップを把握しておく)
最新の防災・減災に関する書籍や、非常持ち出し袋などの防災グッズは、次のバナーから探してみてください。
独学で基礎を固めたうえで、どの研修機関を選ぶかは、日程・費用・開催地のバランスを見て決めるのが現実的です。気になる機関が複数あれば、公式サイトで最新の日程や空き状況を確認してから申し込みましょう。
よくある質問
Q. 防災士になるのに学歴や年齢の制限はありますか?
A. 研修機関の多くは年齢・学歴の制限を設けておらず、誰でも受講を申し込めます。実際、防災士研修センターやNTT ExCパートナーの研修は、年齢・職業を問わず受講可能と案内されています。ただし未成年者の場合は保護者の同意が必要になることがあるため、申込前に各機関の募集要項を確認しましょう。
Q. 防災士の資格に有効期限はありますか?
A. 防災士の資格自体に更新制度はなく、一度認証登録されれば失効することはありません。ただし、認証登録時に提出する救急救命講習の修了証には有効期限(発行から5年以内など)があるため、登録申請のタイミングによっては講習を受け直す必要が出てくる場合があります。
Q. 防災士の資格を取ると就職や転職で有利になりますか?
A. 防災士は業務独占資格ではないため、資格があるだけで特定の職業に就けるわけではありません。ただし、自治体の防災担当や、企業のBCP・危機管理部門、不動産・建設業などでは、防災に関する体系的な知識を持つ人材として評価されることがあります。応募先の業種・職種によって評価のされ方が異なる点は理解しておきましょう。
Q. 救急救命講習はどこで受ければよいですか?
A. お住まいの地域の消防署、または日本赤十字社の各支部で受講できます。消防署主催の講習は多くの場合無料ですが、開催日程が限られているため、研修を申し込む前後の早い段階でスケジュールを確認しておくとスムーズです。
Q. 大学・自治体の講座と民間研修機関、結局どちらを選べばよいですか?
A. お住まいの自治体や大学で近いうちに開催予定があり、かつ対象条件(居住地・在学など)を満たせるなら、費用を抑えられる大学・自治体の講座がおすすめです。一方、「できるだけ早く」「希望する日程・場所で」取得したい場合は、全国各地で高頻度に開催している防災士研修センターやNTT ExCパートナーのような民間研修機関が向いています。
Q. オンラインだけで防災士の資格は取得できますか?
A. 研修機関によって対応は異なりますが、多くの研修は事前のオンライン学習と、対面での集合研修(2日間程度)を組み合わせた形式が基本です。完全オンラインのみで資格取得まで完結できる窓口は限られるため、申し込みを検討している機関の最新の実施形式を公式サイトで確認してください。
【豆知識】防災士の資格制度はどう広がってきた?
防災士制度は、阪神・淡路大震災をきっかけに市民やボランティアによる「自助・共助」の重要性が注目されたことを受けて、2003年度にスタートしました。その後の認証登録者数の推移を見ると、制度への関心の高まりがうかがえます。
- 東日本大震災(2011年)をきっかけに関心が高まり、2015年度に累計10万人、2020年度に累計20万人を達成しました。
- 2024年11月には累計認証登録者数が30万人を突破したと報じられています。
- 日本防災士機構の公式サイトに掲示されている認証者数カウンターによると、2026年9月末時点での累計認証登録者数は368,610名に達しています。
制度開始から約20年で、累計の認証登録者数は右肩上がりに増え続けていることがわかります。一方で、資格を取得した後にどこまで地域・職場で実際に活動できているかは個人差が大きいとも指摘されており、資格取得そのものをゴールにせず、取得後の活動まで見据えて研修機関を選ぶことが大切です。
出典:認定NPO法人日本防災士機構公式サイト(トップページ認証者数カウンター、2026年9月末時点)、神戸新聞NEXT「防災士、認証登録30万人突破」(2025年1月掲載、日本防災士機構調べ)
まとめ
防災士の講座選びで結論から言えるのは、「できるだけ早く・好きな日程で取りたいのか、それとも費用を抑えて取りたいのか」を先に決めることが、遠回りをしない一番のコツだということです。日程や開催地の自由度を優先するなら防災士研修センターやNTT ExCパートナーのような全国対応の民間研修機関、費用を抑えたいなら居住地やタイミングが合う大学・自治体の養成講座、まずは知識だけ試してみたいならTACのような通信講座、というように、目的によって選ぶべき窓口は変わってきます。
理由は、防災士がどの窓口で取得しても同じ資格である一方、研修の開催頻度・費用・開催地という条件面での違いが、申し込みやすさを大きく左右するためです。まずは日本防災士機構の実施機関一覧やお住まいの自治体の情報を確認し、自分の都合に合う窓口が見つからなければ、全国対応の民間研修機関を検討するという順番で探してみると、無理なく申し込み先を決められるはずです。申し込み前には、各機関の公式サイトで最新の日程・料金を必ず確認しましょう。

